「どのAIを使えばいいか」という問いに、AIを比べることで答えは出ません。先に「何をやりたいか」を決めると、使うべきAIはほとんど自動的に絞られます。
この記事は、AIを業務に取り入れたいものの、種類が多すぎて選べずにいる中小企業の経営者向けです。
同じ内容を、弊社の代表とエンジニアが動画でも話しています(10分49秒)。読むより見たいという方は、こちらからどうぞ。
結論:AIは「どれが一番いいか」では選べない
AIを選ぶときの判断軸は、性能の高さではありません。やりたいことに対して、それが得意なAIかどうかです。
用途ごとの目安を先に示します。
| やりたいこと | 向いているAI |
|---|---|
| 文章を書く、調べる、相談する | ChatGPT |
| 画像をつくる(バナー、SNS投稿、サイトの素材) | ChatGPT |
| Googleのスプレッドシートやメールと連携させる | Gemini |
| 制作や開発の作業そのものを任せる | Codex |
| 難しい制作を、費用をかけてでも高い精度で仕上げる | Claude |
御社が「まずAIを業務に使ってみたい」段階であれば、ChatGPTひとつで始めて問題ありません。制作や開発まで踏み込みたい場合に、Codexが選択肢に入ります。
弊社が社内でメインに使っているのはCodexで、作業内容によってClaudeを使い分けています。理由は後半で説明します。
なぜ「一番いいAI」を探すと迷い続けるのか?
AIの情報は、1日で状況が変わります。新しいツールが出て、既存のツールが更新され、昨日の比較記事が今日には古くなっています。
弊社はAIを日常的に使い、業界の動きも追っていますが、それでも把握できていないAIは数多くあります。専業でも追い切れない量が出続けているというのが実態です。
ここで「一番いいAIを見つけてから始めよう」と考えると、いつまでも始められません。比較を続けている間に前提が変わってしまうからです。
さらに問題なのは、性能の高いAIを選んでも、それが目的に合っていなければ成果が出ないという点です。得意でない作業を任せると、期待した結果が出ないまま費用だけが増えていきます。
社内の分業と同じです。営業が得意な社員にシステム開発を任せても、うまくいきません。能力の問題ではなく、担当の問題です。AIも同じで、得意分野の外側に仕事を振ると、性能の高さは意味を持ちません。
AIは2種類に分けて考える
数え切れないほどあるAIも、業務で使う範囲では2つに分けられます。この区別が、選び方の土台になります。
| 種類 | 何をするものか | 代表的なもの |
|---|---|---|
| 対話型のAI | 人が指示し、AIが文章や画像を返す。実行するのは人 | ChatGPT、Gemini |
| AIエージェント | 指示すると、パソコンの中で作業そのものを進める | Codex、Claude |
対話型のAIは、優秀な相談相手です。文章を書いてもらう、調べてもらう、画像をつくってもらう。出てきたものを人が受け取り、使います。
AIエージェントは、そこから一歩進みます。ファイルを開き、書き換え、動かして確認するところまで自分で進めます。人がやっていた作業そのものを引き受ける点が違います。
いまのAIで最も大きく変わったのは、この後者です。 文章や画像をつくれること自体は、以前から知られていました。パソコンの中の作業を任せられるようになったことが、実務での意味が大きい変化です。
御社が「AIで何かを効率化したい」と考えたとき、まずどちらの話をしているのかを分けてください。相談相手が欲しいのか、作業を代わりにやってほしいのか。ここで選ぶAIが変わります。
文章や画像をつくるAIは、どう使い分けるのか?
対話型のAIとして、ChatGPTとGeminiを取り上げます。
ChatGPTは何が得意か
ChatGPTはオールラウンダーで、たいていのことは相談できます。そのうえで、弊社が特に評価しているのは画像生成です。
画像生成の機能が新しくなって以降、実務で使える水準に届きました。ホームページの画像、バナー、SNSに載せる投稿画像といったものは、ChatGPTがあればおおむね足ります。
「まずAIを触ってみたい」という段階であれば、ChatGPTから始めるのが現実的です。使っている人が最も多く、困ったときに情報も見つかります。
Geminiはどこで使うのか
正直に書くと、弊社が制作や開発を進める場面で、Geminiを使うことはほとんどありません。用途が合わないためです。
ただし、Geminiが向いている場面ははっきりあります。
- Google のサービスを使っている会社:スプレッドシート、ドキュメント、Gmailとの連携が強く、結果をそのままスプレッドシートに出すといった使い方ができます
- 調べものを任せたいとき:リサーチの精度は高く、要所で使う価値があります
- 動画をつくりたいとき:動画生成は優秀です
社内のやり取りがGoogleで完結している会社であれば、Geminiから入るほうが自然です。ふだん使っている道具の中でAIが動くため、導入の負担が小さくなります。逆にMicrosoft中心の会社であれば、無理にGeminiを選ぶ理由はありません。
このように、同じAIでも「向いているかどうか」は会社の環境によって変わります。一般的な優劣で選ばないほうがよい理由がここにあります。
制作や開発を任せるAIは、どう使い分けるのか?
ここからはAIエージェントの話です。CodexとClaudeを取り上げます。
多くの経営者にとって、この2つは自分で触るものではありません。ただ、制作会社や開発会社に外注するときに、相手が何を使い、なぜそれを選んでいるかを聞けるようになります。判断材料として知っておく価値があります。
Codexが向いている場面
CodexはChatGPTをベースにしたAIエージェントです。弊社が社内でメインに使っているのはこちらです。
利点は2つあります。
- 画像生成をそのまま使える:AIと話しながら画像をつくり、その画像をサイトに反映するところまで一続きで進みます。制作の途中で別のツールに移る必要がありません
- 費用あたりで動かせる量が多い:後述するClaudeと比べて、同じ費用でより多くの作業を任せられます
ChatGPTを触ったことがある方なら感覚が近く、始めやすいという面もあります。安価なモデルを選べば、かなりの量をこなせます。
Claudeが向いている場面
Claudeは、現時点で最も性能が高いAIのひとつです。デザイン面も制作面も優秀で、指示した以上の仕上がりで返してくることがあります。
弱点ははっきりしていて、費用が高いことです。気軽に使い続けられる価格ではありません。
そのため弊社では、Codexを基本として、難易度が高く仕上がりを優先したい作業のときにClaudeを使う、という分け方をしています。
AIの費用はどう考えればよいのか?
AIを無料で使ってきた方ほど、「AIは無料のもの」という感覚を持ちやすくなります。ここが判断を誤りやすい点です。
弊社の考え方はこうです。AIは、非常に優秀な社員を1人雇うのに近いものです。 そう捉えるなら、人件費に相当するコストを割く前提で考えるほうが、結果的に成果が出ます。
同時に、逆の失敗も起きます。高いAIに、簡単な仕事をさせてしまうケースです。
最も高性能なAIを契約して、メールの返信を書かせている。これは、優秀な人材を採用して雑用だけを任せているのと同じで、費用に見合いません。中学生でもできる作業に最高性能を充てても、差は出ないからです。
判断の順番はこうなります。
- 何をやらせたいのかを決める
- その作業に必要な性能を見積もる
- その性能に見合う費用のAIを選ぶ
「高いAIを選べば安心」でも「無料で済ませたい」でもありません。やりたいことに費用を合わせるという、通常の設備投資と同じ考え方です。
irohaが実際にどう使い分けているか
弊社の実際の構成を書きます。
| 用途 | 使っているAI |
|---|---|
| 制作・開発の主軸 | Codex |
| 難易度が高く、仕上がりを優先する作業 | Claude |
| 画像の生成 | ChatGPT |
弊社のエンジニアが最初にアプリをつくったときは、GoogleのAntigravityというツールを使っています。ふだんGoogleのサービスに触れていたことが理由でした。最初の1歩は、すでに使っている道具の延長で選ぶほうが進みやすいという例です。
なお、この構成は「これが正解だから」ではなく、弊社がやっている仕事の内容に合わせた結果です。御社の業務が制作や開発でなければ、同じ組み合わせにする必要はありません。
よくある質問
Q. AIは結局どれを使えばいいですか?
A. まずChatGPTから始めてください。文章、調べもの、画像づくりまで一通り対応でき、使っている人が多いため情報も見つけやすいためです。そのうえで、社内がGoogleのサービス中心であればGemini、制作や開発の作業まで任せたい場合はCodexを検討するという順番になります。
Q. 無料のAIだけでは足りませんか?
A. 試す段階であれば無料で十分です。ただし業務に組み込む段階では、有料版を前提にしてください。AIを1人の社員と考えるなら、その働きに対して費用が発生するのは自然です。無料の範囲に収めようとすると、任せられる仕事の量と質が限られます。
Q. AIツールが多すぎて、何から情報を追えばよいか分かりません
A. 追わなくて構いません。AIの情報は専業でも追い切れない量が出続けており、全体を把握してから始めるという進め方は現実的ではありません。自社でやりたいことを1つ決め、それができるAIを1つ選ぶ。この順番であれば、情報量に振り回されずに進められます。
何から始めればよいか
やることは1つです。「どのAIを使うか」ではなく「何をやりたいか」を先に決めてください。
やりたいことが決まっていれば、選択肢は自然に絞られます。逆にやりたいことが決まらないまま比較を始めると、情報量に対して判断できず、いつまでも始められません。
- 文章や画像をつくりたい → ChatGPT
- Googleのサービスと連携させたい → Gemini
- 制作や開発の作業を任せたい → Codex
そのうえで、自社のやりたいことにどのAIが合うか判断が難しい場合は、お問い合わせからご相談ください。現在の業務内容を伺ったうえで、どこから手をつけるべきかをご提案しています。