顧問先向けの説明資料をAIで作るとき、任せられるのは制度の要約と、相手に合わせた言い換えです。適用の判断は任せられません。この線引きが、士業でAIを使う際の実務的な境目になります。

この記事は、顧問先への説明資料や案内文の作成に時間を取られている、税理士・社労士事務所の方向けです。

どこに時間がかかっているのですか?

制度そのものを調べる時間より、同じ内容を相手ごとに書き直す時間のほうが長くなりがちです。

  • 制度改正の内容を、業種や規模に合わせて言い換える
  • 経理担当者向けと経営者向けで、詳しさを変える
  • 毎年ほぼ同じ内容を、年度に合わせて作り直す

いずれも判断そのものではなく、判断した内容を伝える形にする作業です。専門性が必要なのは前段で、後段は分量の割に付加価値が出にくい部分になります。

ここを丸ごと抱えているために、本来時間を使うべき個別の相談に手が回らない、という事務所は少なくありません。

どこまで任せられますか?

判断と伝達を分け、伝達側だけを任せるのが基本です。

作業 任せられるか
制度の内容を要約する ○ 出典を自分で確認することが前提
経営者向けの平易な言い方に直す ◎ 最も効果が大きい
資料の構成・見出しを整える ○
この顧問先に適用されるかの判断 ✕ 任せない
金額の試算 ✕ 任せない

注意点が2つあります。

1つは、制度の内容を記憶から書かせないことです。改正の施行日や要件は変わります。必ず公式の資料を自分で確認し、その内容を渡したうえで文章化させてください。

もう1つは、顧問先の情報の扱いです。氏名や決算数値をそのまま入力する必要はありません。「製造業・従業員20名」のように条件だけを伝えれば、資料の作成には足ります。ここは守秘義務に直結するため、事務所として先に線を引いておくべき部分です。

irohaの見解

士業の業務は、調べて判断する部分と、それを分かりやすく伝える部分に分かれています。価値があるのは前者ですが、時間を食っているのは後者です。

AIは後者に強く、前者には向きません。この分け方をそのまま業務に当てはめれば、専門性を損なわずに時間だけを減らせます。

逆に言えば、判断まで任せようとした時点で、確認の手間が元の作業を超えます。任せる範囲を狭く決めておくほうが、結果的に効果が出ます。

もう一点、事務所として決めておきたいのは、AIを使ったことを顧問先に伝えるかどうかです。伝える義務があるわけではありませんが、方針が定まっていないと担当者ごとに判断が分かれます。作成の過程で使い、内容は事務所として確認して出す。この形であれば、説明を求められても筋が通ります。

まとめ

  • 時間を食っているのは判断ではなく、相手に合わせた言い換え
  • 制度の内容は自分で確認し、文章化だけを任せる
  • 適用の判断と試算は任せない。顧問先の情報は条件だけ渡す

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